獣医師目線の犬種図鑑・チワワ編

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獣医師による独断と偏見に満ちた犬種図鑑・チワワ編です。

チワワはジャパンケネルクラブ2016年のデータでは登録頭数50,405頭、トイプードルに次いで第2位の人気犬種です。

第1位は2000年以降ミニチュア・ダックスフントからトイ・プードルに変わりましたが、チワワはずっと安定の第2位をキープしています。

そんなチワワのオモテとウラの顔をのぞいてみましょう。

目次

1 チワワのオモテの顔
 01 小さくてかわいい見た目
 02 飼い主さんひとすじ
 03 活発な性格
 04 お散歩が楽
 05 お手入れが簡単
 06 どこにでも連れていける
 07 体臭が少ない
 08 意外と丈夫

2 チワワのウラの顔
 01 攻撃性の問題
 02 他の犬が苦手
 03 吠える
 04 しつけにくい?
 05 事故にあいやすい
 06 食べむらが多い

3 チワワのかかりやすい病気
 01 水頭症
 02 低血糖症
 03 気管虚脱
 04 膝蓋骨脱臼
 05 僧帽弁閉鎖不全症
 06 難産

4 まとめ

 

1 チワワのオモテの顔

01 小さくてかわいい見た目

チワワの魅力は何と言っても小ささ!犬という概念を覆されるそのサイズは3kg以下、猫よりも小さいんです。子犬の時には本当に手のひらサイズといっても過言ではありません。

そしてだれもが「かわいい!」と本能的に思わずにはいられない大きく黒々とした瞳。うるうるしたこの瞳に見つめられたら、犬好きでなくとも訴えかけてくるものがあるはずです。

短毛と長毛がいて、毛色も黒、茶、クリーム、ブリンドルなど幅広いバリエーションがありますので、自分好みの外見を選ぶことができます。

02 飼い主さんひとすじ

誰にでもフレンドリーというよりは、飼い主さんだけに心を開き、他人や他の犬に対しては距離を置くタ傾向があります。

かといって飼い主さんにどっぷり依存するわけではなく、適度な自立心もありますので、お留守番もそんなに苦にはなりません。

03 活発な性格

ぬいぐるみのような外見ゆえ、おとなしいイメージを持たれがちですが、意外と活発で自我もしっかりしている犬種です。

こわがりな子もいますが、自分の何倍もあるような大きな犬に果敢に向かっていくような気の強さを発揮する子もいます。

04 お散歩が楽

基本的な運動量は、室内で動き回っているだけでも十分というくらいで、毎日の散歩に費やす労力は最小限で済む犬種といえます。引っ張る力も弱いため、女性や高齢の方でも問題なく散歩できます。

ただ、家の中にだけいるとこわがりになったり、人や犬が苦手になって問題行動の原因になりますので、メンタル面のためのお散歩は必要です。

05 お手入れが簡単

小さいのでブラッシングやシャンプーは短時間で済みます。トリミングは必要な犬種ではありませんので、サロン通いは必須ではありません。自宅で十分お手入れできます。

06 どこにでも連れていける

とにかく小さいので、小さなバッグに入れてどこにでも気軽に連れていけます。普通のバックの中にひっそりと入ってたりして、こんなところに犬がいた!とびっくりすることもあるくらいです。公共の交通手段を利用するのも苦になりません。

移動中もハアハア・ワチャワチャした感じはなく、おとなしくバックの中に納まっていることが多いです。

07 体臭が少ない

体が小さいせいかもしれませんが、体臭が少ないです。皮膚のトラブルも少ない犬種です。

08 意外と丈夫

か弱げな見た目に反して、意外と丈夫です。

水頭症などのいくつかの先天性の病気さえなければ、成犬になってからはすぐ体調を崩すようなひ弱さはなく、小さいからと言って健康管理に特に神経質になる必要はありません。

 

2 チワワのウラの顔

01 攻撃性の問題

動物病院での治療中、歯をむいてうなったり、実際に噛んでくる子が少なからずいます。また、飼い主さんに対してもお手入れをしようとすると威嚇するとか、些細なことがきっかけで噛まれてしまうという相談を受けることもわりとよくあります。

一見威張っているようにも見えるのですが、実はチワワのきもちとしては怖くて身を守ろうとしていることが多いので、主従関係をわかせようと高圧的に叱ったり、体罰を行うなどのしつけをすると事態は悪化してしまいます。

02 他の犬が苦手

警戒心が強いので、お散歩で他の犬とあいさつできなかったり、ドッグランに行っても全く遊ばずに固まってしまったり逃げてばかり、という相談もよく受けます。

子犬の頃の社会化でかなり予防できるのですが、社会化が十分でなく、成犬になってトレーニングを開始した場合は、他の犬と遊べるようにするのなかなか大変かもしれません。

03 吠える

こちらも警戒心の強さゆえなのですが、人や他の犬や玄関のチャイムの音などに吠えるチワワは多いようです。

小さくても番犬としてちゃんと仕事をしてくれるのはありがたいのですが、この仕事熱心を歓迎できるケースばかりではなく、人にとっては問題行動になってしまうことがあります。

04 しつけにくい?

トイレを覚えない、吠える、噛むなどしつけがうまくいっていないケースが少なくないですが、チワワのせいばかりではないと感じます。

チワワのルーツは愛玩犬なので、訓練性能を重視して品種改良されていないのは事実なのですが、小さいからといってしつけをそもそもしていないか、チワワに合わないしつけをしているという人側の問題の方が大きそうです。

ちゃんとしつけをすれば、応えてくれる犬種だと思います。

05 事故にあいやすい

足元にじゃれついてきたのを間違って踏んでしまった、蹴ってしまった、抱っこしていたら落としてしまったなどの事故が多いです。

小型犬はこのような事故は珍しくないのですが、ある程度体が大きければ大事に至らなくても、チワワの場合はやはりその小ささゆえに、事故が起きたときに大事になることが多いです。

特に小さなお子さんと同居する場合は、チワワを乱暴に扱わないよう注意が必要です。

06 食べむらが多い

そもそも食に関心がないトイプードルと違って食欲自体はあるのですが、「おやつは食べるけどドッグフードは食べない」という食べむらに悩む飼い主さんが多いです。

おやつは人と犬のお楽しみではあるのですが、問題はその量です。体の小さなチワワにとって、ジャーキーたった1本でも、体重50kgの人に換算すると25本となります。

飼い主さんはほんのちょっとのおやつのつもりでも、それでおなかいっぱいになってしまってドッグフードが食べられない、ということがとても多いのです。

チワワのおやつは、その体の小ささを十分考慮してあげる必要があります。

 

3 チワワのかかりやすい病気

01 水頭症

頭の中の脳室という部分に液体が異常にたまり、脳を圧迫する病気です。

症状は主に神経系にあらわれ、命にかかわる重い発作から、ただ単にボーっとしているだけということもあります。動きがおかしくなったり、性格が凶暴化することもあります。

内科的な治療が継続して必要になります。薬に反応しない重症例の手術は一部の限られた施設で行われています。

子犬を選ぶときに、小さすぎたり、動きがおかしい場合はこの病気が潜んでいるかもしれません。

02 低血糖症

子犬は肝臓で糖を作る力が十分ではなく、小型犬ほど体重当たりの糖の消費量が多いため、チワワの子犬は低血糖症を良くおこします。

低血糖症になると、歩き方がふらふらしたり、ひどくなるとぐったりして動かなくなったり、けいれんを起こすこともあります。

成犬になれば起こさなくなるのですが、子犬のうちは食事をとれなかったり、寒さにさらされたり、運動をしすぎたりといったことで低血糖になってしまうことがあるので、ぶどう糖を常備するなど注意が必要です。

03 気管虚脱

気管は口から肺までの空気の通り道なのですが、生まれつきこの気管が柔らかく、つぶれてしまう病気です。

咳が出たり、酸素が取り入れられず苦しくなったりします。呼吸をするときにガーガーというアヒルが鳴くような音を出すこともあります。

小型犬全体によく見られ、肥満や加齢で悪化します。ほとんどは気管を広げる薬や二次的な炎症を抑える薬で維持できますが、ひどくなると手術が必要なケースもあります。

04 膝蓋骨脱臼

膝蓋骨(膝のお皿)が外れてしまう生まれつきの病気です。小型犬全体にとても多い病気で、チワワも1/3くらいは持っているんじゃないかなあと思います。

チワワは体の軽さが幸いして、膝が多少外れてぐらぐらしても、深刻な歩行困難まで至ることは少ないですが、肥満を予防し、滑ったりジャンプしたりする動きを制限するなどのケアが必要です。重症例では手術が必要なこともあります。

05 僧帽弁閉鎖不全症

心臓の部屋を区切って血液がうまく流れるように働いている弁のひとつがぴったり閉じなくなって、血液の逆流が起こってしまう病気です。中年~高齢の小型犬に非常に多くみられる病気で、咳や運動を嫌うといった症状から、肺に水が溜まって苦しくなったり、失神発作が起きることもあります。

いったん発症すると、お薬の内服がずっと必要になります。小型犬に良くみられる歯周病が僧帽弁閉鎖不全症の原因にもなっており、予防のために歯のケアはとても大事です。

06 難産

病気ではないですが。。。「犬といえば安産の象徴」、残念ながら超小型犬のチワワには当てはまりません。帝王切開での出産になることも多いです。

 

4 まとめ

動くぬいぐるみのようなチワワは、愛されることの天才です。かわいい、という言葉がこれほど似合う犬種もないでしょう。ついつい甘やかしてしまい、こわがりやわがままになってしまうことも多いので、ぬいぐるみではなく犬として扱うことが肝心だと思います。

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