ペットの高度医療の功罪

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ペットの医療も高度化して、20年前はかなり特殊だったCTやMRIなどの検査も珍しくなくなってきました。

 

循環器科、整形外科、皮膚科、眼科、行動治療科など、専門病院の数も増え、充実した先端医療を受けようと思えば受けられる地域も増えてきていると思います。

 

以前だったら診断できなかった病気が診断され、治療もできるようになるというのは良いことなのですが、反面、医療費の高額化という問題が言われるようになりました。

 

私自身も、日々の診療の中でこの変化を肌で感じ、どうしたものかと思うことがあります。

 

例えば白内障という病気、かなりの率で犬には(特に高齢になると)見られるものなのですが、以前は手術が一般的ではなく、有効な治療法を提示することができませんでした。

 

最近は白内障の手術を行う病院も増え、治療の選択肢のひとつとして飼主さんに説明する病院が増えてきたと思います。

 

この病気は完治できます、と伝えられるようになったのはとても良いことなのですが、それにかかる高額な医療費を伝えるとき、私は迷いを感じることがあります。

 

飼主さんが手術をしないと決めたとき、「お金を出さないせいでこの子を治してあげられなかった」という罪悪感を持たせてしまうのではないか、と思うからです。

 

 

 

 

飼育放棄の原因のNo.1はペットの病気だと、保護活動されている方がおっしゃっていました。治療できないから捨てる、というケースが多いのだそうです。

 

ペットを飼うならちゃんと面倒を見る、というのは当然のことではあるのですが、100万を超える医療費が生じるケースもある今日の高度化した医療を思うと、なかなかこの「当然なこと」もたやすくないこともあると思います。

 

飼い主さんとペット双方が幸せでいられる着地点は、必ずしもひとつではありません。そこらへんを腹を割って話せるような関係を築くのが、獣医師の務めかなと思います。

 

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