猫からうつる?・SFTS(重症熱性血小板減少症候群)のはなし

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加計学園から始まり、獣医師会の狂犬病ワクチンに関する声明発表など、何かとお騒がせな獣医業界ですが、ここにきてまたセンセーショナルな出来事が。

猫にかまれて感染か SFTS(重症熱性血小板減少症候群)で50代女性が死亡

テレビでも連日特集が組まれ、診察室でもよく飼い主さんの話題に上ります。誤解されていることも多かったので、最新のデータ(2017.7)をもとにこの病気について解説してみたいと思います。

目次

01 結論
02 SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
03 人での発生状況
04 人への感染ルートについて。猫に噛まれて感染するのか?
05 じゃあどうすればいいの?
06 まとめ
07 参考サイト

01 結論

SFTSは、犬と猫でも発症する

SFTSを発症した犬と猫から、ダニを介さず直接人に感染する可能性がある

現時点ではSFTSの発生は西日本だけだが、今後他の地域に広がる可能性がある。

02 SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?

マダニが媒介するウイルスが引き起こす病気で、このウイルスを持ったマダニに噛まれることにより感染します。

中国、韓国、日本で発生が報告されています。新しいウイルスで、2011年に初めて中国で発見され、日本での最初の患者さんは2013年に発見されています。

人での症状は発熱・頭痛など風邪のような症状で始まり、つづいて消化器症状(吐いたり下痢したり)が起き、ひどくなると多臓器不全に進行して命を落とすこともあります。

血液検査をすると、血小板という血が止まるための血液の成分が減少しているのが特徴です。

動物ではほとんどが感染しても症状が出ないと言われているものの、1例ずつですが犬と猫の発症例が厚生労働省のHPで報告されています。どちらも症状は人の症状と同じだったようです。

03 人での発生状況

2013~2017.7の間に280例の発症があり、そのうち死亡例が58例でした。死亡率は全期間を平均すると約20%です。

ただし年々死亡率は下がってきているようで、2013年は54%→2017年は11%でした。病気について広く知られ、早く適切な治療が受けられるようになったかもしれません。

発症には年齢が深くかかわっていて、20代以下の発症はほとんどなく、発症しても軽症で済むことが多いようです。

50代以降に発症が多く、死亡率も高くなっています。おじいさんが山に芝刈りに行くのが最も危険なケースです。

発生は3月から11月に報告がありますが、多いのはダニの活動が活発になる5~8月です。ダニが表に出てこない冬の間は発生はありません。

そして発生地域。下の図を見ていただくと一目瞭然ですが、西日本に限定しています。

しかし、全国のマダニからSFTSウイルスの遺伝子が検出されていますので、西日本以外の地域でも今後絶対大丈夫というわけではなさそうです

シカ・イノシシなどの野生動物や飼い犬の抗体値を調べた調査では、非流行地でも抗体陽性の動物が発見されてるので、むしろ人での発症が西日本に限定していることが不思議なくらいです。

国立感染症研究所HPより

 
04 人への感染ルートについて。猫に噛まれて感染するのか?

主な人への感染ルートはダニに咬まれることですが、中国と韓国では少数ながら体液を介しての人から人への感染例もあります

ウイルスは患者の血液・尿・便等の体液から検出されていますが、最も感染力が強いのは血液です。

そして「猫から感染したかも?」という話についてですが、今回のケースは野良猫に50代の女性が噛まれてからSFTSで亡くなっています。

この猫にSFTSのような症状が出ていたこと、女性にはダニに噛まれた跡がなかったことから、ダニを介さずに猫から直接感染した可能性が言われています。

今のところ疑いの段階で正式な発表はなく、調査結果が待たれます。国内外でも動物から直接人に感染したという報告は今のところないようです。

しかし、猫でSFTSの発症例がある以上、その体液を介して猫から直接人に感染するリスクは否定できないと思います。

そして、今回はたまたま猫でしたが、残念ながら犬にもSFTSの発症例がありますので、犬からも感染するリスクがあります

健康な犬猫から感染するリスクはほとんどないですが、流行地で、ガンガンダニに噛まれているペットがSFTS様の症状を示した場合は要注意です。

05 じゃあどうすればいいの?

人もペットもとにかくダニに噛まれないことです。当たり前すぎますが。。。

猫は室内で飼育し、犬はコンクリートの上を散歩させて草むらには入らせない。庭の草を刈る。アナログだし非現実的だと思われる方も多いかもしれませんが、これが現状では一番確実な方法です。

というのも、動物病院で処方されるさまざまなダニの薬はありますが、私が知る限りダニがとりついてから落とすものであり、ダニがとりつくのを防ぐものではありません

薬が作用してダニが落ちるまでに2日程度かかることもあり、いったんとりついてしまったら、薬を使用していてもやはり噛まれるリスクはあるのです。

人ではDEETという成分がダニを寄せ付けないために推奨されていますが、残念ながらこの成分、毛をなめてしまう犬猫には使えません。

忌避効果をうたったハーブ製品もありますが、多分そこまで効果が十分ではないのと、猫には使えないでしょう。

犬猫に使えるダニ忌避剤、ウイルスに対するワクチンなどの開発が待たれますが、しばらくは念ための駆除剤を使いながらも、原始的な方法でダニとの接触を絶つのが最善の方法になりそうです。

06 まとめ

調べていて予想外にウイルスを持ったダニが広がっていること、犬と猫で発症例があったことに驚きました。

初期ほど致死率の高い病気ではなくなりましたが、特効薬が今のところない病気です。今後のウイルスの広がり方には要注意ですね。動向を注視していきたいと思います。

07 参考サイト

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)のページ(国立感染症研究所)

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A(厚生労働省)

 

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