注射のときのアルコール綿は実は必要ないかもというはなし

Pocket

 

動物病院や人の病院でよく見るアルコール綿。採血の前に、予防注射の前に、腕をゴシゴシ、という経験をみなさんされていることでしょう。

でも実はこの行為、人の医療では意味がないと言われています。

北海道のせたな町立国保病院瀬棚診療所の吉岡先生が行った試験で、インフルエンザの予防接種のときに、673人をアルコール綿を使うグループと、ただの水にひたした綿を使うグループに分け、注射のあとの皮膚感染の有無を比較したものがあります。

結果はアルコール綿グループ、水の綿グループともに、1例も感染は認められませんでした。

皮下注射の前のアルコール消毒は必要か : 予防接種におけるランダム化比較試験

人の糖尿病の患者さんも、アルコール綿を使わず、服の上から注射することもよくあるにもかかわらずほとんど問題が起きていないというです。糖尿病の患者さんは病気のため感染症を起こしやすい状態にあるのですが、それでも感染を起こさないということは、やっぱりアルコール綿いらないのでは、と思います。

さて、このアルコール綿問題、動物病院ではどうなのでしょう?

犬猫へのアルコール綿使用についての研究は見つけられなかったのですが、人でアルコール綿不要の理由として考えられているのが、「皮膚に住んでる菌は注射針によって皮膚の中に持ち込まれたとしても、そこで生きることができない」ということらしいので、犬猫でも人と同じように考えてよいのかな、と思います。

と、ここまでは特に目新しい話ではなく、動物病院のスタッフにもわりと広く知られていることだと思うのですが、WASAVAのワクチンについてのガイドラインを読んでいて驚いたのは以下のQ&Aでした。

Q:注射部位に消毒薬(アルコールなど)を使用すべきか?
A:使用すべきでない。消毒薬は、弱毒生ウイルスワクチン製剤を不活化することがあり、利益がないことがわかっている。

たしかに、生ワクチン(弱らせた生きたウイルス)そのものにアルコールを注ぎ込んだら死んじゃいそうなのはわかりますが、皮膚に塗られたぐらいのアルコールで、生ワクチン効かなくなっちゃいますかねえ?もしそうだったら大問題なので、だれかちゃんと調べてくれないかな。

いずれにせよ、アルコール綿消毒は、あまり意味がないとわかっていつつ、でもやらないと「消毒もしないでに注射された!!」と心配されてしまう可能性があるので、アルコール綿を廃止している病院や動物病院はほとんどないと思います。

また、採血のときに毛を刈らずに血管を見つけるために必要という、毛の生えた動物特有のニーズもありますので、動物病院からアルコール綿が完全に姿を消すことはないとは思います。

が、もしアルコール綿を使わずに注射している獣医師を見たら、怒らずに、動物のことを考えてくれてる獣医さんだなあと思ってもいいのかもしれません。あのスーッとする感じ、苦手な子も多そうですよね。

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です