猫と暮らす妊婦さんが気を付けるべき9のポイント・トキソプラズマについて

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我が家の娘と子守り猫。気のいい猫は娘にとってこの上ない遊び相手です。

 

「妊娠したのですが、猫を手放したほうが良いといわれました。本当ですか?」

と不安そうに聞かれることが時々あります。

猫=トキソプラズマ=妊婦さんに危険、というイメージはかなり浸透しているようで、新しい命を授かって幸せいっぱいの妊婦さんに、心配して忠告してくださる方が少なからずいるようです。

トキソプラズマは確かに猫から感染する可能性のある病気です。

でも知識があれば防ぐことができる病気です。

猫よりも気をつけなければいけないこともあります。

安心して猫と暮らすために、妊婦さんが気をつけるべきポイントを解説したいと思います。

目次

01 結論
02 トキソプラズマとは
03 感染源となるもの
04 感染が問題になるのは主に妊婦さん
05 抗体検査 陰性でも要注意
06 猫から感染するケース
07 猫の抗体検査は必要か
08 妊娠中に気をつけるべき9のポイント
09 まとめ
10 参考にしたサイト

01 結論

飼い猫から感染するリスクはゼロではないがかなり低い

気をつければ飼い猫からの感染は防ぐことができるので、猫を手放す必要はない

猫よりも生肉や土いじりから感染することの方が多い

02 トキソプラズマとは

トキソプラズマは、顕微鏡でしか見れないような小さな原虫という寄生虫です。トキソプラズマというと猫を連想しますが、実は人を含め、多くの哺乳類・鳥類に感染します

トキソプラズマは猫の体内でのみ、オーシストというとても丈夫な卵のようなものを作って便の中に排泄します。

猫以外の動物の体の中ではオーシストを作ることはできず、筋肉の中などでシストという状態で眠っています。

人はこのオーシスト(猫の便由来)かシスト(猫以外の動物の肉由来)のいずれかを摂取することで、トキソプラズマに感染します。

03 感染源となるもの

トキソプラズマが含まれていて、感染源になる可能性があるものとしては、

豚、羊、牛、鳥、馬、鹿、クジラなど、あらゆる哺乳類・鳥類の生肉(魚は大丈夫)

猫の便(排泄されて24時間以上たったもの)

猫の便が混じった土

があり、これらを口から取り入れることによって感染します。まれに目から感染することもあるようです。実際の感染ルートとしては、生肉が最も多いと言われています。

ちなみに、トキソプラズマが猫から排出されるのは、猫の一生のうち、一番最初にトキソプラズマに感染してから数日~2週間です。猫がトキソプラズマの感染源となるのは猫の一生のうち、最大でたった2週間だけなのです。

04 感染が問題になるのは主に妊婦さん

人は初めてトキソプラズマを摂取したときにのみ感染がおこりますが、健康な人は免疫でトキソプラズマを抑え込むことができるので、症状は全くないか、あってもリンパ節が腫れたり、軽い風邪程度で済みます。

そして過去にトキソプラズマに感染したことのある人は、その後トキソプラズマを摂取したとしても抗体ができているので症状は出ません。

問題は妊婦さんが生まれて初めてトキソプラズマに感染したときです

お母さんは無症状~軽い症状で済むのですが、お母さんの体内に入ったトキソプラズマは胎盤を通過して赤ちゃんを襲います。

免疫が未発達で無防備な赤ちゃんは、神経系を中心にトキソプラズマの攻撃を受けてしまいます。

妊娠のどの時期に感染したかで感染率も症状も違い、赤ちゃんは無症状のこともあれば、流・死産となってしまったり、生まれてからも発達が遅れや視力障害、 黄疸、肝臓や脾臓の腫れ、皮下出血などの症状が出ることもあります。

05 抗体検査 陰性でも要注意

できれば妊娠する前に、女性と猫のトキソプラズマの抗体を測っておくと、何を警戒すべきか(あるいはしなくてもよいのか)はっきりします。

そうは言ってもトキソプラズマの検査をするのは妊娠が発覚してから、というケースがほとんどだと思います(私もそうでした。汗)

抗体検査の解釈を、妊娠前と妊娠中にわけて解説します。

 

妊娠前の抗体の解釈

妊娠前の女性の抗体が陽性の場合、妊娠中にトキソプラズマを摂取してしまっても母子ともに影響はありません。

また、猫の抗体が陽性の場合、今後トキソプラズマを排泄することはなく、トキソプラズマの感染源としては警戒する必要はありません。

人と猫の組み合わせによって次のように考えます。

①妊娠を考えている女性(陽性)で飼い猫(陽性)→心配ない

②妊娠を考えている女性(陽性)で飼い猫(陰性)→心配ない

③妊娠を考えている女性(陰性)で飼い猫(陽性)→飼い猫からうつることはないが、他のルート(生肉や土、他の猫)からの感染の可能性がある

④妊娠を考えている女性(陰性)で飼い猫(陰性)→全てのルート(生肉、土、全ての猫)から感染する可能性あり。

 

妊娠中の抗体の解釈

妊婦の抗体が陰性の場合

妊婦で陰性と出た場合は、現時点での胎児への感染は否定されるのでひとまず安心なのですが、その後の妊娠期間中に感染しないように注意が必要です。

 

妊婦の抗体が陽性の場合

妊娠前の女性の抗体が陽性と出ると安心材料なのですが、妊婦の抗体検査で陽性と出ると話は別です。

妊娠中の初感染によるものだと胎児へ影響が出る可能性があるので、いつトキソプラズマの感染が起きたのかを調べる検査に進んだり、状況によってはトキソプラズマの治療薬を使用するケースもあるようです。→詳しくはこちらへ。

 

乱暴なことを言うと、人も猫も妊娠前にトキソプラズマにかかっておけば、トキソプラズマに関しての不安はなくなります。

日本人はトキソプラズマの抗体を持っている割合が2~10%位、抗体を持っている猫も10%程度らしいので、実際は人も猫も抗体陰性、というケースが一番多いと思われます。

私も日々猫のうんち検査をやっているにもかかわらず、陰性だったのでびっくりしました。

06 猫から感染するケース

以上のことを踏まえると、飼い猫からトキソプラズマがうつるケースというのは、妊婦さんが抗体陰性で、かつ、猫が妊娠中に初めてトキソプラズマに感染し、感染後2週間だけ排泄しているトキソプラズマ(しかも排泄して24時間以上経過している便に含まれる)を口から取り入れる、という状況になって初めて成立することなので、確率としてはかなり低いことがわかると思います。

実際にトキソプラズマの感染ルートとしては、肉からが最も多いので、猫だけでなく肉にも十分な警戒をする必要があります。

07 猫の抗体検査は必要か

飼い猫で陽性と出れば、その後その猫を警戒する必要はなくなるので、検査する意義はあるとは思います。

が、ほとんどの猫(90%)は陰性と出ることが予想されるので、検査にはこだわらず、いずれにしてもトイレ掃除などに気をつけて対応する、ということでも良いと思います。

ちなみに、動物病院で猫のトキソプラズマ抗体検査を行う場合、血液を0.5ml位採血し、外部の検査機関に依頼して、結果が出るのに2-3日、という感じになると思います。

高い部類の検査ではありませんが、あまりメジャーではないので、事前に病院に電話して、やってもらえるかどうか、料金はいくらかなど確認してみると良いと思います。

08 妊娠中に気をつけるべき9のポイント

妊婦さんや猫の抗体保有状況によって注意すべきことは違ってくるのですが、どんな状況でも、以下のことに気をつけていれば大丈夫です。

①生肉を食べない。肉にはよく火を通す。特にジビエ(野生動物の肉)は注意。

②野菜や果物はよく洗う。

③肉や野菜を調理した器具もよく洗う。

④素手で土いじりをしない。特に猫が来てトイレにしているような場所は注意。

⑤カバーのかかっていない砂場で遊ばない(猫がトイレにしていることがある)。

⑥井戸水、わき水を飲まない。

⑦飼い猫は外に出さない、狩りをさせない、生肉を与えない(新たにトキソプラズマに感染することを防ぐため)。

⑧素性の知れない猫(特に子猫)を家に入れない。

⑨飼い猫のトイレ掃除は1日1回行う。妊婦以外の人が掃除するか、妊婦がする場合は手袋着用。

09 まとめ

アメリカでは、猫砂の袋に妊婦さんのトキソプラズマ症の注意喚起が書いてあるという話を聞いたことがありますが、日本はトキソプラズマという単語は広く知られているものの、まだまだちゃんと理解されていないなあと思います。

トキソプラズマ症で赤ちゃんに影響が出る、というのはいろんな条件をかいくぐらなければならないのでめったに起きることではないのですが(先天性トキソプラズマ感染児の発生は、10,000分娩あたり1.26人)、それでも起きてしまっているのは事実です。

正しい知識でトキソプラズマに感染する赤ちゃんが一人でも減るといいなと思います。

10 参考にしたサイト

トキソプラズマ症とは(国立感染症研究所)

先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症 患者会 トーチの会

トキソプラズマ妊婦管理マニュアル(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)

 

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