獣医師目線の犬種図鑑・ポメラニアン編

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獣医師による独断と偏見に満ちた犬種図鑑・ポメラニアン編です。

 

ポメラニアンは、ジャパンケネルクラブ2016年のデータでは登録頭数18,221頭、第4位の人気犬種です。

上位犬種が時代によって入れ替わる中で、昔から安定して常に10位以内にいる犬種です。そして近年の小型犬人気に後押しされるように徐々に順位を上げ、2008年からはずっと4位をキープしています。

そんなポメラニアンのオモテとウラの顔をのぞいてみましょう。

 

目次

1 ポメラニアンのオモテの顔
 01 子犬のようなあどけない外見
 02 元気いっぱいで明るくタフな性格
 03 他の犬と仲良くできる
 04 トリミングは基本必要なし
 05 わりと丈夫

2 ポメラニアンのウラの顔
 01 吠える
 02 クールでマイペースな一面も
 03 ブラッシングが必要

3 ポメラニアンのかかりやすい病気
 01 アロペシアX(X脱毛症、ポメはげ)
 02 膝蓋骨脱臼
 03 骨折
 04 僧帽弁閉鎖不全症
 05 気管虚脱
 06 涙やけ(流涙症)

4 まとめ

 

1 ポメラニアンのオモテの顔

01 子犬のようなあどけない外見

黒々としたつぶらな瞳に、ふわふわのゴージャスな毛につつまれた毛糸玉のようなまんまる体型、ピンととがった耳。かわいい要素がいっぱい詰まった犬です。

トリミングするとガラッと印象がかわり、特にサマーカットで短くするとまるで子犬のように見えます。

いくつになってもあどけなさが残り、実はおじいさんなのに子犬に間違えられる、ということもよくある犬種です。

 

02 元気いっぱいで明るくタフな性格

見た目から繊細な印象があるかもしれませんが、実は明るく元気いっぱい、少々のことには動じない肝の据わった子が多いです。

うまくいかないことがあってもめげることを知らず、自信満々、いつもなんだか楽しそうです。いじけたり落ち込んだりすることはあまりありません。

活動的で好奇心も旺盛なので、お散歩大好き!運動大好き!になることが多いでしょう。

03 他の犬と仲良くできる

他の犬とのトラブルが比較的少ない犬です。

小型犬にありがちな、犬が怖くて遊べないということもなく、かといって喧嘩っぱやいということもなく、適度な距離感をとりながら、上手に他の犬と関われる子が多いという印象があります。

多頭飼育にも向く犬種だと思います。

04 トリミングは基本必要なし

トリミング犬種ではありませんので、トリミングサロン通いは必須ではありません。自宅でのブラッシングとシャンプーで維持できます。

夏場の涼しさと見た目のかわいらしさから、サマーカットで全体を短く刈り込むスタイルにしている子も多いですね。

柴犬カット、たぬきカットなど、本来の姿とはガラッと雰囲気が変わりますが、何とも言えない可愛さです。毛量もあるので、カットが引き立ちますね。

ただし、ポメラニアンの場合、毛を短くするとなかなか伸びなくて冬になっても短いままだったり、ツヤツヤの毛質がパサパサとした感じや、もつれたフエルトのような質感に変わってしまうことがあるので注意です。

05 わりと丈夫

華奢な見た目に反して、病気が少ない犬種です。

ポメラニアンがかかりやすい病気もありますが、ほとんどが小型犬全体によくみられるものばかりで、しかも深刻なものは少ないです。

純血種の中ではかなり病気が少ない犬種だと思います。

 

 

2 ポメラニアンのウラの顔

01 吠える

スピッツと言えば吠える犬の代名詞でしたが、ポメラニアンもスピッツ一族の末裔ですので、吠えやすい性質は持っています。とはいっても、吠える犬御三家には入らない程度ですが。

ほどほどに警戒心があり、気も強いので、何もしないと環境によっては吠える犬になってしまう可能性はあります。

幸い頭は良くしつけの効果は出やすい犬種ですので、吠えて困る環境でしたら、癖にならない早いうちからしつけを開始してください。

02 クールでマイペースな一面も

見た目の愛らしさに反して、意外と小型犬らしからぬ骨太な性格です。

日本ケネルクラブの分類では、ポメラニアンは愛玩犬グループではなく、スピッツ&原始的な犬グループに分類されており、シベリアンハスキーやサモエド、柴や秋田などと親戚です。

そのことからも想像がつくかもしれませんが、北方系犬種特有のツンデレというか、クールな感じもやはり持ち合わせています。

飼主さんを常に見てくっついて歩き、目があえばしっぽを振るといったような、飼い主さん依存になることはあまりありません。自我はしっかり確立されています。

飼い主さんが出かけようとしていても眠い時は寝ていたりと、マイペースに生活して、自分ひとりの時間も楽しめる犬種です。

お留守番が苦にならないというメリットもありますが、ちぎれんばかりにしっぽを振る犬のイメージを持っている方にとっては、ちょっと物足りなく感じるかもしれません。

03 ブラッシングが必要

トリミングは必要ありませんが、長毛なのでブラッシングは最低でも週に2-3回は必要です。

ふわふわのもつれやすい毛質の子が多く、お手入れしないと毛玉だらけになり、皮膚病になってしまうこともあります。見た目だけではなく、健康のためにも日々のブラッシングが欠かせません。

ふわふわのおしりの周りの毛に〇んちがつくこともあり、ポメラニアンのゴージャスな外見を保つには、それなりのお手入れが必要です。

 

3 ポメラニアンのかかりやすい病気

01 アロペシアX(X脱毛症、ポメはげ)

アレルギーや膿皮症などの皮膚トラブルは少ないポメラニアンですが、特有の皮膚病として、アロペシアXというものがあります。

以前はポメはげなどと言われわりと良く見る病気でしたが、最近は減ってきたように思います。

この病気の特徴は、頭と四本の足以外の部分の毛が抜けてしまうことで、原因はわかっておらず、治療法も確立されていません。

見た目だけの問題で、本人は痛くもかゆくもなく、無治療でも問題はないことが多いです。治療するとなると時間がかなりかかる上、治療の反応率もあまりよくありません。

02 膝蓋骨脱臼

膝蓋骨(膝のお皿)が外れて、本来の位置とは違う場所にずれてしまう病気です。生まれつきの病気で、ポメラニアンに限らず小型犬全体にとても多く見られます。

体の軽さが幸いして、膝が多少外れてぐらぐらしても、深刻な歩行困難まで至ることは少ないですが、肥満を予防し、滑ったりジャンプしたりする動きを制限するなどのケアが必要です。重症例では手術が必要なこともあります。

03 骨折

以前は紙のように薄い骨という意味で、ペーパーボーンの持ち主とも言われたポメラニアンですが、最近はそこまで折れやすいという印象はありません。

トイプードルやイタリアングレーハウンドなどの方が折れやすさでは上ではないかと思います。

とは言っても決して頑丈な骨ではないので、落とす、踏むなどの事故には十分気をつけなければなりません。お子さんがいるご家庭では、犬の扱い方を特に意識して教える必要があります。

04 僧帽弁閉鎖不全症

心臓の部屋を区切って血液がうまく流れるように働いている弁のひとつがぴったり閉じなくなって、血液の逆流が起こってしまう病気です。

中年以降の小型犬に非常に多くみられる病気で、運動を嫌がるようになったりなんとなく元気がなくなったりと、年のせいかしら?と勘違いされるような症状から始まることが多いです。

進行すると咳が出たり、肺に水が溜まって苦しくなったり、倒れてしまうこともあります。

いったん発症すると、お薬の内服がずっと必要になります。小型犬に良くみられる歯周病が僧帽弁閉鎖不全症の原因にもなっており、予防のために歯のケアはとても大事です。

05 気管虚脱

気管は口から肺までの空気の通り道なのですが、生まれつきこの気管が柔らかく、つぶれてしまう病気です。

咳が出たり、酸素が取り入れられず苦しくなったりします。呼吸をするときにガーガーというアヒルが鳴くような音を出すこともあります。

小型犬全体によく見られ、肥満や加齢で悪化します。ほとんどは気管を広げる薬や二次的な炎症を抑える薬で維持できますが、ひどくなると手術が必要なケースもあります。

06 涙やけ(流涙症)

涙やけ(流涙症)は目の周りの毛が茶褐色に変色してしまう状態で、ポメラニアンもその毛色のせいか、涙やけが目立つ犬種です。

原因としては、逆さまつげなどが目を刺激して涙の量が増えるために起きるケースや、目から鼻に通じる涙を捨てる管(鼻涙管)が詰まって涙があふれだしているケース、不適切なフードなどによる涙の成分の異常などがあります。

中には治すことができるものもあるのですが、完治が難しいケースも多く、ずっとお付き合い&ケアが必要になるかもしれません。

 

4 まとめ

昔からずっと愛されてきた犬種で、派手さははありませんが欠点が少なく、長く人気犬種にとどまっている実力を伺わせます。

どんな人にも飼いやすい犬種ですが、適度な距離感と、猫のような存在感の犬を求めている方には特に向いているかもしれません。

 

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